ワイヤーウィンチ
お客さんが「ビスをはずして分解しようと思ったが、カバーが外れない」と言って、お店に持って来た。そうと聞いては俺が分解せざるを得まいと、ビスをはずしてみたが、やはり分解できない。
そこで改めて分解図を見たが、図面上はこれでカバーが外れるはずである。たぶん固着しているだけなので、トントンカンカンと時間を掛けて叩いたり、潤滑材吹いたりしてやれば外れるはずだ。お客さんには「これはちょっとお時間いただきます」といって預かることに。
おっと、まだ症状を聞いてなかった。
「若い衆がワイヤーが緩んだまま巻き取ったので、中で絡んで、操作ボタンと逆向きになってしまった。モーターが空回りできれば、直せるんだが。反対側のカバーは外れたが、配線とかあって、違うと思ったので、こちら側のかばを外そうと思ったが外れなかった」と。
とりあえず分解しないことには、ワイヤーの絡んでいる患部にたどり着けないので、もう一度分解図をじっくり見ながら、どうすりゃ良いのか作戦を考える。
モーターの軸をすっぽ抜けば、ワイヤーのリールが手で回るかもしれない。モーターの軸を抜くには? あぁ両側のカバーを外さなきゃなのか。じゃぁ、外れる方の片方だけカバーを開けて、モーターの軸を直接手で回したらどうだろう。
やってみたところ、モーターをグルグルグルグル回すと、リールがちょびっとだけ回る。この調子でモーターを回し続ければ、いずれはワイヤーの患部に行き当たるだろう。よし回そう。グルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグル・・・・・・・
ん?これって、普通にコンセントにつないでスイッチ入れればよくね?
ハイ、コンセントにつなぎました。ハイ、スイッチを入れました。ハイ、モーターが回りました。ハイ、問題なくワイヤーがスルスルと出てきました。ハイ、「ビスを外してもカバーが外れず、分解できない問題」は棚上げのまま終了。
と思いきや、突然、患部が姿を現した!!
この患部を見て、初めてお客さんの言っている症状が理解できた。しかしお客さん、こりゃ分解したからって、この絡みは直りませんよ。と30分前に帰ったお客さんに向かってつぶやいてみる。
「分解できない問題」は完全に棚上げ決定。
さてどうしたものか。ドライバーでこじてみたがもうまくいかない。ラジオペンチでも掴めない。なんとかして引っ張りたい。何か良い方法は無いかと考えたが、
これだ。
針金を通して、グイグイ引張る。引張る引張る。引張ったら少し緩んできた。この一箇所だけでなくあと2箇所ほどグイグイ引張って、ようやくワイヤーがほどけた。あとはきれいに巻くだけ。
結局「分解」せずにお客さんの元へ。
いろいろと教訓めいた物を残してくれたウィンチでした。