修理して〼ます

島田市の金物屋ですが、電動工具など修理もしますので、アップしてみます

三本鍬

鍬といえば木のクサビが入っているものと相場が決まっていましたが、最近では色々な鍬が出回っているんですねぇ

これは、小振りな三本鍬ですが、クサビすらありませんよ。

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という認識は間違っているということを、ほんの数年前に知った。

昔ながらの鍬は木のクサビが付いていて、最近の鍬は木のクサビじゃない、というわけではない。

実は、このような鍬の形式の違いは、地方によって皆違うのだ。

 自分の住んでいる地方は、木のクサビで留める型がほとんどであった。

木のクサビで留めてあると重厚な感じがするし、手が掛かっている感じがする。それ以外の方法、例えば鉄のクサビが打ってあったり、鉄の輪っかで留めてあったりすると、いかにも簡易的で、手抜きに感じられた。

だから、木のクサビで留めてある鍬は「本物」でそれ以外の形式は「偽者」「安物」と思っていた。

しかしそれは間違いで、地方々々によって昔からの 伝統の形というものがあるのだ。

それは鍛冶文化や木材の文化の違いであったり、主要農作物の違いであったり、その土地の土の性質であったり、雪が降るとか土が凍るとか、そこに住んでいる人の気質であったりとか、いろいろな要因で、その土地独自の鍬が生まれたのだろうと想像する。

それが近年(といってもかなり前から)、ホームセンターの全国展開に伴って、見たこともない鍬(多分全国一律に同じ桑)が店頭に並ぶようになった。

特に自分にはなじみの深い木のクサビの鍬は、工業での大量生産に向いてない為に、量販店にはまったく無い状態で、木のクサビ=「本物」、鉄のクサビ=「量販店の大量生産品」という図式が形成されてしまった。それは、この辺りに住んでいる人も同じだったようで、鍬といったら木のクサビ、という風潮はしばらくあった。

がしかし、最近は、鍬といったら木のクサビ、だった時代を知らない世代の人や、他所から引っ越してきた人も多くなってきて、必ずしも、鍬といったら木のクサビ、ではなくなってきている。

本格農業の人ならいざ知らず、家庭菜園程度の人や、お年寄りには、木のクサビじゃない鍬、のほうが軽くて使いやすいのだろうと思う。

ここは冬になると土が凍ってしまうような気候ではないし、未開の地を開墾するわけでもないし、趣味や老後の楽しみなのだから、昔ながらの木のクサビにこだわるもよし、こだわらないもよし、だと思う。

ただ、今までに見たことも無いような鍬の修理を預かることが多くなった、というだけのお話でした。